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6月といえば『紫陽花』を飾る季節

紫陽花(あじさい)の季節に寄せて

—6月に花を飾るということ—

梅雨に入る6月。
空はどんよりと曇りがちで、道ゆく人々の足取りもどこか重たげになります。
けれど、そんな空模様の下でふと視線を上げると、街の片隅や庭先に、ふっくらと丸く咲いた紫陽花の花が目に留まる。
まるで「雨の日こそ、きれいに咲いてみせるわ」とでも言うように、しっとりと色づくその姿に、ふと心がほどける瞬間があります。

紫陽花は、まさに日本の梅雨を象徴する花。
けれど、単に“季節の花”としてではなく、古くから人々の暮らしに深く根づいた存在でもあります。
この時期、紫陽花を家に飾るというのは、どこか心の習慣のようなもの。
湿気の多い日々に、小さな光を灯すようにして飾られる紫陽花には、目に見えない癒しの力が宿っています。


◆ 紫陽花と日本の風土

日本の6月は、雨とともに始まります。
「うっとうしい季節」と感じる方も多いですが、そんな時期だからこそ映えるのが紫陽花の美しさです。
雨に濡れて色を深め、曇り空の下でもその存在感を放つ紫陽花は、まさに日本の風土に寄り添った花。

土の酸性度によって花の色が変わることでも知られており、青・紫・ピンクと、同じ株でも年によって微妙に色が異なるのも、紫陽花の不思議な魅力です。
これは「移ろいやすい心」を象徴するとも言われ、万葉の時代から歌に詠まれてきました。
まさに、日本人の繊細な感情や美意識と呼応するような花なのです。


◆ 紫陽花を飾る文化的な意味

紫陽花を家に飾る風習は、梅雨の季節に花を取り入れることで空気感を整えたり、湿度を和らげるという暮らしの知恵から生まれたとも言われます。

また、紫陽花には「魔除け」「厄除け」の意味も込められており、特に6月の6のつく日(6日・16日・26日)に、玄関や水まわりに逆さに吊るすと良いという言い伝えも全国各地に残っています。
これは「金運が上がる」「病気を防ぐ」「夫婦円満になる」など、さまざまな民間信仰と結びついていて、実際に古民家や老舗旅館などでは今でも見かけることがあります。

もちろん、そうした言い伝えの有無にかかわらず、雨の季節に紫陽花を飾るというのは、どこか“気持ちの節目”をつける行為にも思えます。
じめじめした空気を花一輪でリセットするような。
それは、心を整えるための、ちょっとした儀式なのかもしれません。


◆ 花屋の紫陽花、庭の紫陽花

「紫陽花って、庭に咲いてる花でしょ?」
そんな声をお客様からいただくこともあります。
確かに、紫陽花は家庭の庭や道ばたに多く見られる“身近な花”です。
でも、花屋に並ぶ紫陽花はひと味違います。

たとえば、切り花用に育てられた紫陽花は、茎がしっかりしていて長持ちしやすく、花色も鮮やか。
最近では、“アンティークカラー”と呼ばれる、くすみ系のグリーンやワインレッド、ブラウンがかった色合いも人気です。
品種も豊富で、「アナベル」「ダンスパーティー」「マジカルレボリューション」など、名前からして華やかなものばかり。

さらに、紫陽花はドライフラワーにもしやすい花なので、「生花として楽しんだあとも、別の形で楽しみたい」という方にもぴったり。
雨が止まない日も、部屋の中にちょこんと咲く紫陽花があれば、それだけで気分が変わる——そんな存在なのです。


◆ 紫陽花に癒される時間を

「今日はちょっと疲れたな」
「気分がパッとしないな」
そんな日こそ、紫陽花をひと枝だけでも飾ってみてください。
お気に入りのカップやグラスに、そっと差し込むだけでも構いません。
コロンと丸い花房が、どこか安心感を与えてくれます。

紫陽花は、決して派手ではありません。
でも、その静かな存在感は、忙しない日常のなかで、ひととき心を落ち着けてくれる力があります。
雨の日の読書や、お茶の時間に、紫陽花がそっと寄り添ってくれる。
それだけで、梅雨の時間が少し特別になるのです。


◆ おわりに

6月は、季節がぐっと移り変わるとき。
春の名残と夏の入り口が混ざりあうような、少し不安定で、でもどこかセンチメンタルな月です。
そんな時期に咲く紫陽花は、私たちに「変化することの美しさ」を教えてくれるような気がします。

色が変わり、形が変わり、でも確かにそこに咲き続ける花。
その姿に、私たちは励まされたり、癒されたり、時には背中を押されたりもするのです。

今年の6月。
あなたもぜひ、紫陽花をひと枝、暮らしの中に取り入れてみませんか?
雨音と花のある時間が、きっと少しだけ、心を軽くしてくれます。

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