草の日(9月3日)に寄せて ― 草花とともに生きる私たちの暮らし
草の日の由来と意味
毎年9月3日は「草の日」と呼ばれています。その由来はシンプルで、「9(く)」「3(さ)」の語呂合わせです。しかし、この日には単なる語呂合わせ以上の意味が込められています。草花に親しみ、自然を身近に感じ、命を大切に思う気持ちを新たにする日。それが「草の日」です。
花と比べると「草」という言葉は、どこか地味で控えめな印象を持たれがちです。けれども、私たちの生活や自然環境を支えているのは、実はこの“草”の存在なのです。草があるからこそ季節を感じられ、動植物が生きる場所が生まれ、土壌が守られ、景色に彩りが与えられています。
草は「四季のメッセンジャー」
春、道端にタンポポが黄色い花を広げると、「ああ、春が来たな」と心が躍ります。夏には青々としたツユクサや、白い花を咲かせるドクダミが涼しげな姿を見せ、秋にはススキやオミナエシが風に揺れ、冬には緑を絶やさないクローバーやシダが静かに息づきます。
草はまさに「四季のメッセンジャー」。花屋の店先で見る華やかな切り花だけでなく、足元に広がる名もなき草花も、同じように季節を映し出しているのです。
雑草と呼ばれる草の魅力
「雑草」という言葉は、一般的に邪魔者扱いするニュアンスで使われます。庭や畑に生えてきたら抜かれる対象ですし、都市部ではアスファルトの隙間から顔を出しても「景観を乱すもの」とされることがあります。
しかし、見方を変えれば雑草は驚異的な生命力を持った植物です。厳しい環境の中でも芽吹き、根を張り、再び成長を繰り返す。人の手で何度も抜かれても、また翌週には小さな葉をのぞかせています。その姿に「 resilience(しなやかな強さ)」を感じ、勇気づけられる人も多いのではないでしょうか。
「草の日」は、そうした雑草の持つ力強さや美しさに気づくきっかけでもあります。
草と人の暮らしの関わり
草は古来より人の暮らしと密接に関わってきました。
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食用の草 … ヨモギやスギナは薬草や食材として利用され、春の七草は無病息災を願って食べられてきました。
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薬草 … ドクダミやゲンノショウコなどは民間薬として重宝され、今でも健康茶や外用薬として親しまれています。
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家畜や農業とのつながり … 草は牛や馬の餌となり、稲わらやヨシは家を葺く材料や日用品として活用されてきました。
つまり「草」とは、ただそこに生えている存在ではなく、人とともに生き、人の暮らしを支えてきた植物たちなのです。
草の象徴する心
日本の文化の中でも「草」はしばしば詩や歌に登場します。万葉集には道端の草花を詠んだ歌が多く見られ、平安時代には「草子」「草紙」といった言葉が書物の代名詞として使われました。これは草が日常と切り離せない存在だったことを示しています。
また「草の根運動」という言葉があるように、草は「小さいけれど確かな力」「庶民的で生活に根ざした存在」を象徴します。華やかさはなくとも、しっかりと地に根を張り、人々の生活に息づく草。そこに日本人は共感や親しみを感じてきたのでしょう。
足元の草を見直す一日
私たちが忙しく過ごす日常の中で、道端の草をじっくり眺める時間は少ないかもしれません。しかし、足元に広がる緑には無数の物語が潜んでいます。小さな虫のすみかとなる草、雨水を吸い込み土砂崩れを防ぐ草、そして季節を告げる花を咲かせる草。
9月3日の「草の日」には、ぜひ一度立ち止まって草を見つめてみてください。庭の隅や公園の片隅に、驚くほど多様で美しい世界が広がっていることに気づくはずです。
花屋から見た草の存在
花屋という仕事をしていると、華やかなバラやユリ、可憐なガーベラといった切り花に目が行きがちです。しかし花束を形作る上で欠かせないのが「草もの」や「グリーン」と呼ばれる存在です。アイビーやユーカリ、レモンリーフなどの葉物が花を引き立て、草のような枝ものがアレンジメントに自然な息吹を与えてくれます。
つまり、草は単独で目立つことは少なくとも、全体を支え、彩りを整える重要な役割を果たしているのです。これは、人の社会における「縁の下の力持ち」のようでもあります。
草の日に思うこと
「草の日」は、単なる語呂合わせの記念日ではなく、自然と人との関わりを見直す日です。足元に広がる草の世界に心を寄せることは、私たちが自然の一部であることを思い出させてくれます。
忙しい日常の中で、ふと道端に咲く草花を見つけたら、その小さな存在に感謝してみてください。草は控えめながらも、確かに命の輝きを放っています。
――9月3日「草の日」、あなたも少し足を止めて、草の力強さと優しさを感じてみませんか。
🌸 フラワーショップバンビーノ
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