静けさに咲く美――蓮(ハス)の花の魅力
水面に咲く神秘の花
蓮(ハス)の花。
それは、まるで静寂の中でそっと息づくように、凛とした美しさを放つ水生植物です。
梅雨の終わりから夏の初めにかけて、朝の水面に浮かび上がるようにして咲くその姿は、どこか神聖で、見ている人の心をそっと整えてくれるような不思議な魅力を持っています。
ハスの花は「泥より出でて泥に染まらず」とよく表現されます。
泥の中から茎を伸ばし、やがて透き通るような薄紅や白の花を咲かせる――その姿は、まるで困難や苦しみの中でも清らかさを保ち続ける人間の理想を体現しているかのようです。
古代から愛された蓮
ハスの歴史はとても古く、日本だけでなく世界中で尊ばれてきた花です。
古代エジプトでは「青い睡蓮(スイレン)」が再生の象徴として神聖視され、壁画や棺に描かれていました。そして、インドや中国、日本などの仏教文化圏では、ハスは仏様が座る「蓮華座(れんげざ)」としても知られ、悟りや清浄の象徴とされています。
実際に、奈良県・藤原京からは約1300年前のハスの種が出土し、現代でもそれを発芽させて咲かせるという試みが成功したこともあります。
その事実からも、ハスという植物がいかに長い年月を生き抜き、人々と共に時代を越えてきたかがわかります。
ハスとスイレンの違いは?
「ハス」と「スイレン」は、どちらも水に咲く美しい花として知られていますが、実はまったく異なる植物です。
見分けるポイントは主に次の3つ。
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花の咲く位置
→ ハスは水面から茎が高く伸びて、その先に花が咲きます。
→ スイレンは水面にぴったりと花が浮かぶように咲きます。 -
葉の形と表面
→ ハスの葉は撥水性があり、まるで水玉が転がるような見た目。葉も水面より上に出ています。
→ スイレンの葉は水面に浮いており、切れ込みがあります。 -
根の違い
→ ハスの地下茎は「蓮根(れんこん)」として食用にされます。
→ スイレンの根は食用にはなりません。
ハスの方がよりスケールが大きく、生命力が強く、花も大きく咲く傾向があります。
そのため、「神聖さ」「清浄さ」「再生」といった深い意味を込めて語られることが多いのです。
ハスの花言葉と意味
ハスの花には、いくつかの意味深い花言葉があります。
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「清らかな心」
泥水の中でも濁らず咲く様子から、純粋さや無垢な精神を象徴します。 -
「沈着」「雄弁」
冷静で芯の強い美しさを備えている花。誰かの心の支えになるような、包容力ある存在感を感じさせます。 -
「救済」
仏教の教えと深く結びつき、悩み苦しむ人々を導く慈悲の花とされています。
贈り物としてはあまり一般的ではありませんが、意味を知ったうえで、心を込めて贈ると非常に奥深いメッセージになります。特に精神的な癒しや再出発、新たな門出を迎える人への応援として、とてもふさわしいお花です。
観賞だけでない、ハスのもう一つの魅力
ハスは「観賞用の花」としての側面だけでなく、食用や薬用としての魅力もあります。
れんこんとしての役割
ハスの地下茎である「蓮根(れんこん)」は、シャキシャキとした食感が魅力の食材。
日本の家庭料理には欠かせない存在で、煮物、揚げ物、きんぴら、酢の物など、さまざまな料理に登場します。
穴が空いていることから「先を見通す」という意味で、縁起物としても使われ、お正月のおせち料理にもよく登場します。
薬膳・漢方として
ハスの葉や種(蓮の実)、花托(花の中心部)などは、中国では古来より薬膳や漢方として使われてきました。
体を冷やし、気持ちを落ち着ける作用があるとされ、夏バテやストレス緩和にも効果的とされています。
まさに、目で癒され、身体にもやさしい――そんな万能な植物なのです。
ハスのある風景――心を癒す時間
早朝、まだ空気に水分が残っている時間帯。
蓮池のほとりを歩くと、どこからともなく香るやさしい香り、静かに揺れる大きな葉、そしてすっと天を仰ぐように咲く花に心を奪われます。
とくに関西なら、大阪の「城北公園」、京都の「法金剛院」や「三室戸寺」、奈良の「薬師寺」などでは、美しいハスの群生が見られます。
蓮は朝早くに咲き、昼には閉じてしまう花。
その儚いサイクルもまた、蓮の美しさの一部なのかもしれません。
限られた時間の中でしか味わえない美――それは、私たちが毎日を大切に生きることの大切さを、静かに教えてくれているようにも感じられます。
最後に――蓮の花から学ぶこと
泥の中に根を張りながらも、汚れずに美しい花を咲かせるハス。
その姿は、現代の私たちが忘れかけている「強さ」や「潔さ」を思い出させてくれます。
誰にでも、心が揺れたり、苦しみの中にいる時間はあります。
でも、その中でこそ咲く美しさがある――
蓮の花は、そんな希望の象徴です。
忙しない日常の中で、ほんのひととき。
蓮の花を見に出かけてみませんか?
きっと、心が少し軽くなるような、優しい時間を過ごせるはずです。
【フラワーショップバンビーノ】
大阪・京橋駅近くにある小さなお花屋さん。
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定休日:火・日曜日
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心に残る花束をお届けします。